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保佐人は何をしてくれるの?【保佐人の仕事・職務】

 

成年後見制度(後見、保佐、補助)のうち、保佐の対象となるのは、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な状況にある方です。

例えば、
「日常の買い物は程度は自分でできるが、土地建物、マンションといった不動産や自動車など重要な財産行為(売却や購入など)については自分では適切にできず、常に他人の援助を受ける必要がある方。」

「ある事柄はよくわかるが、ほかのことは全くわからなかったり、日によって症状が出る日と出ない日があるなど、いわゆる『まだら状態』の方のうち、重度の方。」

などです。

このような方を支援するのが保佐人です。

ご本人(被保佐人)は、成年被後見人ほど判断能力は低下しておらず、他人に頼らずに自分でできることが多くありますので、保佐人の権限も限定的となり、保佐人は当然には成年後見人のような幅広い代理権を有しておりません。

保佐人の権限は原則として同意権と取消権のみで、代理権はありません。

ご本人が行った行為に対して同意を与えるのが原則になっており、ご本人が保佐人の同意を得ずに行った行為で、ご本人にとって不利益になる場合は(民法13条1項各号に定められた重要な法律行為は)、保佐人が当該契約等を取消すことができます。

つまり、ご本人が行った法律行為を尊重しつつも(代理ではなくて同意として介入するのみ)、ご本人の利益保護をはかっているのです(もしもご本人が不利益を受ける場合には契約を取り消す)。

 

保佐人の同意を要する重要な法律行為(=取消しの対象となる法律行為)民法13条1項

ご本人が保佐人の同意なしに以下の民法13条1項各号に定められた行為を行った場合、保佐人は当該契約等を取消すことができます。

  1. 元本を領収し、またはこれを利用すること
  2. 借財または保証をすること
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
  4. 訴訟行為をすること
  5. 贈与、和解または仲裁合意をすること
  6. 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
  7. 贈与の申込を拒絶し、遺贈を放棄し、負担付き贈与の申込を承諾し、または負担付き遺贈を承認すること
  8. 新築、改築、増築または大修繕をすること
  9. 民法602条に定めた期間を超える賃貸借をすること

 

保佐人は本人の同意を得て代理権を付けることができます

家庭裁判所は、ご本人(被保佐人)やその親族、保佐人等からの請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について、保佐人に代理権を付与することができます。

特定の法律行為の例をあげると次のとおりです。

  • 本人の不動産に関する売却・担保権設定・賃貸
  • 住居等の新築・改築
  • 預貯金に関する金融機関との一切の取引
  • 保険金の請求や保険金の受領
  • 定期的な収入の受領(年金・地代・障害手当など)及びこれに関する諸手続き
  • 定期的な支出を要する費用(家賃・公共料金・ローン・保険料など)の支払い及びこれに関する諸手続き
  • 相続の承認・放棄
  • 介護契約その他の福祉サービス契約の締結・変更・解約及び費用の支払い

この代理権付与の審判がされるためには、本人による申立てまたは本人の同意が必要となります。