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死後事務とは?(しごじむ)

 

現代の日本においては、多くの人が病院で亡くなります。

亡くなった後は、その病院の入院医療費を支払い、死亡診断書を取得して市区町村に死亡届を提出し、葬儀の手配をして、通夜、葬儀、納骨、埋葬、永大供養を執り行います。

また、亡くなった方が持ち家であれば、葬儀等が落ち着いてから相続手続きを行えばよいのですが、自分の持ち家ではなく、借りているアパートやマンションである場合には、家賃が発生していますので、速やかにこれら賃貸アパートの契約を解除し、部屋の中の荷物を外に出して建物を明渡したりしなければなりません。

更に、亡くなった方が残した多くの家財のうち不要なものは処分する作業も残っています。

このように、ご本人が亡くなってから通常、ご本人の家族が行うこれら行為を「死後事務」と言います。

 

原則として成年後見人に死後事務を行う権利義務はありません。

後見(保佐・補助)は、ご本人の死亡によって絶対的に終了しますので、ご本人の死亡後に後見人が法律上行わなければならない事務を除き、原則として後見人(保佐人・補助人)には死後の事務を行うべき権利も義務もありません。

ご本人死亡後にこれら死後の事務を行うべき者は、法律上は相続人となります。

しかし、実際には、相続人を調査するまでに時間を要し(それまで葬儀は待てない)、また、相続人の協力を得られないことや、身寄りが全くない(相続人等の親族がいない)場合も少なくなく、更に、そもそも、ご本人死亡後も後見人がご本人の財産を保管していることから、葬儀等の実施や施設利用料、入院医療費の支払いをすることが後見人に求められることが多く、やむを得ず明確な法的裏付けのないままに後見人が葬儀や火葬手続きををしたり、ご本人(被後見人)の財産から医療費の支払いをしたりしているのが実情です。

このような問題を是正するため、平成28年10月13日に「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が施行され、改正された民法と家事事件手続法がスタートしたことに伴い、成年後見人の「死後事務」の関わり方に変更が生じています。
※詳細は別の項目でご紹介します。

 

任意後見契約と死後事務委任契約のセットで準備しておけば一層安心です。

一方、任意後見契約においては、ご本人が亡くなった後の財産管理の計算、相続人等への財産引渡しの事務などは任意後見人が行います。

しかし、死後事務(葬儀、埋葬、官庁への諸届け等の諸各種手続)は任意後見契約の代理権目録には記載することができず、任意後見人の事務の範囲外になります。

従いまして、死後事務も任意後見人にやってもらいたいときは、任意後見契約とは別に「死後事務委任契約」を締結する必要があります。